Nishiakashi’s Blog

徒然なるままに。。教えられること多し。

再生可能エネルギー特措法とは (続き)

 前回の記事(再生可能エネルギー特措法とは)からの続き。

 正式には、"電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法"。
 要約すればこういう事だ。
 再生可能エネルギー源(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)を用いて発電された電気を電気事業者が買い取り、買い取りに要した費用は電気料金の一部(サーチャージ)として電力需要家が負担する。
 今回は、立ち位置を3つに分けて、企業・電力会社・一般家庭とそれぞれまとめてみる。

1.企業
 企業も電力需要家として電気料金(サーチャージ分)の負担が増える。だが、"再生可能エネルギー"発電設備を設ければ、電気事業者に売る事は可能だ。


 買取対象
 ・発電の設備や方法については、安定的かつ効率的に再生可能エネルギー源を用いて発電を行う設備であること等の点について経済産業大臣が認定します(認定を受けた設備を用いて供給される電気が買取対象になります)。

 (引用:経済産業省 資源エネルギー庁 再生可能エネルギーの固定価格買取制度について (PDF)

 これを見ると、そうは簡単に発電設備の認可は下りそうにない。ようは、安全性と安定した電力供給を求められると思われる。当然と言えば当然。だったら、自家発電を現状の法制の内で行って、電気料金を低く抑えるほうを選択するだろう。
 企業としては、既存設備を所有していれば、認可を受ければいいが、新たに参入するとなると敷居は高いかも知れない。
 (某携帯電話会社のように、地方自治体の土地に、調達した安い太陽光パネルを使って、運用を自治体に任せば、旗振りするだけで儲かるだろうが。。。)
 これでは、企業側は"再生可能エネルギー"導入として企業イメージを高めるにしても、この再生可能エネルギー特措法を活用する意義は低い。

2.電力会社
 買取電力は電気料金に上乗せされることだし、懐は痛まない。送(受)電網の整備を考えるくらいか。

 そこで、前回の記事でも懸念した事だが、電力会社が既に持つ"再生可能エネルギー"発電はどういう扱いになるのか?
 経済産業省 資源エネルギー庁に買取制度の解説資料(2011年5月現在)がある。この資料の14頁に、


 ○RPS制度に関する事項
  新制度を導入する場合、RPS制度は廃止することが適当。
 ○既設に関する事項、出力増強の扱いに関する事項
  RPS対象既存設備が、全量買取制度の対象に移行する場合には、RPS法上認定されていた設備について、買取価格は、RPS制度下での取引価格を参考に、事業継続ができるような合理的な価格を電源種別に設定。出力増強による発電量の増加分は、新設の設備による発電量と同様に評価し、買い取ることが適切。

 (引用:経済産業省 資源エネルギー庁 買取制度の解説資料 (PDF)

 そのRPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)とは、

 RPS制度の概要について
 RPS制度(Renewables Portfolio Standard)とは、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(以下、「新エネルギー等利用法」という。)に基づき、 エネルギーの安定的かつ適切な供給を確保するため、電気事業者に対して、毎年、その販売電力量 に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発電される電気 (以下、「新エネルギー等電気」という。)の利用を義務付け、新エネルギー等の更なる普及を図るものです。
電気事業者は、義務を履行するため、自ら「新エネルギー等電気」を発電する、若しくは、他から「新エネルギー等電気」を購入する、又は、 「新エネルギー等電気相当量(法の規定に従い電気の利用に充てる、もしくは、基準利用量の減少に充てることができる量)」を取得することになります。

 (引用:経済産業省 資源エネルギー庁 RPS法ホームページ RPS制度の概要

 上記資料を読むと、どうも電力会社が保有する既設の"再生可能エネルギー"発電も買取制度に移行するようだ。
 となると、総括原価方式で算出された電気料金(再生可能エネルギーで発電した原価を含む)に、再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)を上乗せする事が出来る。それはつまり、電気料金の二重請求が起きるということだ。
 例えると、
 100円のどら焼きを買うとする。中身のあんこは別料金で頂きます。となった場合、
 まず最初は、あんこだけの価格が80円になるけど、どら焼きとしては同じ100円です。で始まる。同じどら焼きが突然180円になったら、誰でもおかしいと思うし、誰も買わない。
 次に、美味しいあんこに変えたので、あんこが90円です。ならば、どら焼き110円(外側の生地20円+あんこ90円)なら納得する。でしょ。

 本来であれば、新たに買取制度が始まっても、既設の再生可能エネルギー発電分で電気料金は上がらないはずです。(基本料金・従量制料金がその分下がる) その後新設された発電所の電力は、再生可能エネルギー促進付加金(サーチャージ)に加算されていくのは分かります。
 少なくとも電力会社は、一度基本となる電気料金を下げて、再生可能エネルギー発電部門は別会社にすべきでしょうね。そのほうが不正も懸念も無い自然な方法だと思います。
 (総括原価方式は過去記事(東京電力による節電のすすめ)を参照して下さい。また、その総括原価方式の問題点については、別の機会に再考します。)

3.一般家庭
 まず一般家庭で、太陽光発電の余剰電力買取制度のように、再生可能エネルギーを買い取ってもらう事は不可能(発電施設の認可が下りない)でしょう。電気料金の負担が増すだけです。
 経済産業省 資源エネルギー庁 買取制度の解説資料 (PDF) の17頁の一番右側の図、
 月々電気料金が6000円から7000円程度(※1ヶ月の電気使用量が約300kWh)の家庭なら、再生可能エネルギー促進付加金が月150円から200円程度とある。これは太陽光発電促進付加金を含めてだ。

 供給電力を"再生可能エネルギー"(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)に移行していくのは、炭素燃料・原子力依存から脱却する意味で、目指すものはある。というところ。これで発電部門・送電部門切り離しの方向に運用出来れば、少しはマシなものになるかも知れないが。
 それは既存の法律(RPS法等)を改正すれば良かっただけの話。わざわざこの特措法まで作って定義したかったのは、全量買取制度の部分としか思えない。結局"需要者負担法"でしかないのか。