Nishiakashi’s Blog

徒然なるままに。。教えられること多し。

原子力損害賠償支援機構法(東京電力救済法)が成立

 どうして可決されちゃうのかなぁ。参議院の存在意義って何?
 さてさて、評判悪い原子力損害賠償支援機構法(東京電力救済法)だけど、何がダメで、皆が糾弾するのか、内容をちょっと読んでみます。条文から取り掛かると難解なので、概要から進めます。


 1.法案の趣旨
 東京電力福島原子力発電所事故による大規模な原子力損害を受け、政府として、
  ①被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置
  ②東京電力福島原子力発電所の状態の安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避
  ③電力の安定供給
 の3つを確保するため、「国民負担の極小化」を図ることを基本として、損害賠償に関する支援を行うための所要の措置を講ずる。

 2.法案の概要
 原子力事業に係る巨額の損害賠償が生じる可能性を踏まえ、原子力事業者による相互扶助の考えに基づき、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織(機構)を中心とした仕組みを構築する。

 (引用:経済産業省 原子力損害賠償支援機構法案の概要(1) (PDF)

 法案の概要から読み解くと、"原子力事故の損害賠償支援機構(仕組み)を作る" ということだ。その設立資金は、第二次補正予算で予算計上されてる。用意周到。
 経済産業省 平成23年度経済産業省関連二次補正予算等概要 (PDF) の「原子力損害賠償への対応」を参照。(機構設立資金70億円・交付国債2兆円・償還財源200億円)
 次に、法案の概要(1)から(5)。(上記引用では省略) これは別紙の、
 経済産業省 原子力損害賠償支援機構法案の概要(2) (PDF) の1頁下の機構の図をみたほうが分かり易い。まず、電力会社(原子力事業者)は機構に、業務費用として一般負担金を払う。平時はそういう形で機構を運営する。
 そして、
 1.今回のように福島原子力発電所事故が発生すると、「特別事業計画」とやらを策定して大臣の認可を受ける。
 2.政府は機構に国債を交付する。
 3.機構は国債を償還(現金化)する。また、金融機関から政府保証で融資を受ける。
 4.その調達資金を東京電力に交付する。
 (東京電力は被災者に損害賠償金を支払う)
 5.「特別事業計画」に従い東京電力は特別負担金として機構に交付金を返済する。
 6.機構は負担金で国債償還額の国庫納付と金融機関への返済を行う。
 という一連の流れになるかと思う。

 さて、気になる箇所がある。


 (4)機構による国庫納付
 機構から援助を受けた原子力事業者は、特別負担金を支払う。
 機構は、負担金等をもって国債の償還額に達するまで国庫納付を行う。

 ただし、政府は、負担金によって電気の安定供給等に支障を来し、または利用者に著しい負担を及ぼす過大な負担金を定めることとなり、国民生活・国民経済に重大な支障を生ずるおそれがある場合、機構に対して必要な資金の交付を行うことができる。

 (引用:経済産業省 原子力損害賠償支援機構法案の概要(1) (PDF)

 つまり、"ただし書き"の状況になれば、通常ルートとは別の追加資金を機構に交付する。とある。
 これが、

 機構は、東京電力による事故収束費用や電力の安定供給のための設備投資等についても融資等の資金援助を行い、東京電力福島原子力発電所の状態の安定化と電力の安定供給に万全を期す。

 (引用:経済産業省 原子力損害賠償支援機構法案の概要(2) (PDF)

ということ。で、図の中に、機構から資金の交付等とは別に東京電力へ向かう矢印のことだ。
 以前の記事(東京電力による節電のすすめ)で書いたが、電気料金は総括原価方式で決定される。少なくとも設備投資に関わるものは、原価として電気料金に反映される(電気料金が上がる)。政府から借りた金で、設備投資(事業拡大)して、その分を需要者から巻き上げる。しかも、借りた金は返さなくていい。素晴らしい仕組みだ。
 ん! まさか、負担金も電気料金に上乗せするつもりなのか? (電気事業法・一般電気事業供給約款料金算定規則には、明言されてないはずだが。。。)

 これはやはり、完全なる東京電力救済法であった。今後何らかの原子力災害が起これば、その原子力事業者も救済される。と言う、原子力事業者救済法。もう彼らは立派な国策企業だ。
 なぜ東京電力(電力会社)だけ。。。って、皆、何か嫌悪感を感じていると思う。
 他の企業は、節電で努力している(災害復旧している)のに、東京電力だけ安泰にしている。こんな大きな事故を起こしておいて、罰を受けるべきだ。と。

 それでもこの企業は、こんなコメントを発表をする。


 本日、「原子力損害賠償支援機構法」が、政府をはじめとする多くの関係者の皆さまの多大なご尽力により成立いたしました。
 当社といたしましては、本法律を含む原子力損害賠償制度の枠組みの下で、国のご支援をいただきながら、今後示される予定の原子力損害賠償紛争審査会による指針などを踏まえ、被害を受けられた皆さまへ公正かつ迅速な補償を進めてまいるとともに、引き続き、電気の安定供給に努めてまいりたいと考えております。

 (引用:東京電力 プレスリリース 「原子力損害賠償支援機構法」の成立を受けて