Nishiakashi’s Blog

徒然なるままに。。教えられること多し。

東京電力による節電のすすめ

 どう考えても、東京電力(電力会社)が節電を奨励するのは、おかしくないか?

 以前の記事(東京電力 企業体としての問題点])で、「東京電力なら、"電気を作ってそれを売る"、のが、基本的な企業活動のはずだ。お客様は"神様"でなければ・・・。」という趣旨のことを書いた。
 電気を売る企業が、"節電"ってのは、「電気はあまり買わないようにして下さい。」と、言っていることだ。立派な株式会社が、自分で自分の首を絞めることをやっている。(ここで言う"電気"とは、東京電力の"商品"としての電力供給サービス全体として考えて下さい)
 ということは、電気を売らないでも儲かるってことだ。と気付く。何故?

1.他に商売を行っていて、そちらで儲かっている?
 これ見て頂きたい。
 東京電力 事業報告書 平成22年度報告書 (PDF)

 5頁から6頁あたり、電気事業の他に、情報通信事業・エネルギー環境事業・住環境生活関連事業・海外事業とある。しかし、売上高・営業利益ともに電気事業と他事業とでは桁が違う。平成22年度分で現状報告と言わないとしても、主幹事業は電気事業ということが明らかにわかる。
 そして44頁の損益計算書、収益の部。いろいろな科目が並んでいるとは言え、電気事業営業収益(電灯・電力料)が収益の柱。補助金等の国庫から支出は見えない。額面上は。
 曲がりなりにも、株式会社。もし補助金を受けていたとしても、財務諸表に表記出来ないだろう。電灯・電力料科目の中に埋め込んだ可能性は確かにある。
 がしかし、

2.電気料金の仕組みに何か隠された秘密がある?
 その通り。電気が売れなくても儲かる仕組みがここにある。(もちろん全然売れないと利益は無いけど)
 東京電力 数表でみる東京電力(7.電気料金・制度) (PDF)

 112頁、電気料金算定のプロセスにはこうある。
 前提計画->原価等の算定->原価等の配分->電気料金の設定。という順を経て、電気料金が決まる。と。
 "原価等の算定"で謳われる総括原価とは、

 総括原価=人件費+燃料費+修繕費+購入電力料(−販売電力料)+諸税+減価償却費+事業報酬+その他(その他経費−その他収入)

 購入電力料・販売電力料は、電気事業者間のもので需要者に対するものではない。
 その他には、経費として、原子力発電に関わるものとして、使用済燃料再処理費用・特定放射性廃棄物処分費・原子力発電施設解体費・損害保険料がある。
 さらに、事業報酬とは、


 ( 注) 事業報酬は、支払利息・配当金等にあたるもので、特定固定資産、核燃料資産、建設中の資産、繰延償却資産、運転資本及び特定投資の合計をレートベースとし、これに報酬率を乗じたものです。

 (引用:東京電力 数表でみる東京電力(7.電気料金・制度) (PDF)

 ということで、報酬率とは、

 4 報酬率は、次の各号に掲げる方法により算定した自己資本報酬率及び他人資本報酬率を三十対七十で加重平均した率とする。
 一 自己資本報酬率 すべての一般電気事業者を除く全産業の自己資本利益率の実績率に相当する率を上限とし、国債、地方債等公社債の利回りの実績率を下限として算定した率(すべての一般電気事業者を除く全産業の自己資本利益率の実績率に相当する率が、国債、地方債等公社債の利回りの実績率を下回る場合には、国債、地方債等公社債の利回りの実績率)を基に算定した率
 二 他人資本報酬率 すべての一般電気事業者の有利子負債額の実績額に応じて当該有利子負債額の実績額に係る利子率の実績率を加重平均して算定した率

 (引用:e-Gov 法令データ提供システム 一般電気事業供給約款料金算定規則

 いわゆる、こういう式、

 報酬率=自己資本報酬率×0.3+他人資本報酬率×0.7
 自己資本報酬率(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本×100 (or 国債等の利回り実績率)
 他人資本報酬率(有利子負債利子率)=金融費用÷期首期末平均有利子負債×100

 文字にすると、
 自己資本報酬率は、一般企業における自己資本利益率。つまり、株主の投資額に比してどれだけ効率的に利益を獲得したか、株を持っていれば、そのうち何割くらいの配当あるのかな?の指標値。
 他人資本報酬率は、式で書くと逆に分かり難いけど、単に、有利子負債(借入金・社債等)の支払い利息のこと。
 それで、報酬率は、自己資本利益率と有利子負債利子率の3割7割で加重平均した値となる。で実際どのくらいなのかと。。。公表されていないのか、探しきれなかった。現在は3%ということらしい。

 さて結局、事業報酬は、報酬率(利益率)をレートベース(資産)に乗ずる。となると、いかがわしい臭いがするのだが、建前はこうだ。
 レートベース(電気事業に関わる固定資産)に、報酬率(利益率)という成長率を乗じて設備投資分を算出。事業報酬という名で、原価に含めようという言い分だ。

 ここまでの"原価等の算定"で計算された総括原価を、"原価等の配分"で分配し、"電気料金の設定"で、個別に契約形態ごとに電気料金を決定する。という流れ。
 つまり、それぞれ総需要者(総需要kWh)で、総括原価を除算して、単位当りの電気料金を算出する。ということだ。

 なんだか難しいけど、簡単にするとこういうことになる。
 企業として営業に係わる原価に、事業報酬を加えたものが商品価格になる。それも、その原価は前提計画から算出してよい。それに加え、仕入原価が上がれば調整額として加算出来て、太陽光買取分も上乗せ。えー。すごい。絶対に利益が上がる仕組みなわけだ。
 でも、落ち着いて考えると、燃料費調整額と太陽光発電促進付加金は別として、一般企業も基本的には、仕入原価+人件費に利益を見込んで、商品価格を決める。と言えばそういうことになる。

 問題の本質は、そこにありそうで、そこに無いような気がする。