Nishiakashi’s Blog

徒然なるままに。。教えられること多し。

ストレステストを翻訳する

 原子力発電所"ストレステスト"とは一体何だ。単なる菅直人の思い付きか? 思い付くほど聡明な頭脳は持っていないか? まあ、怪しげな文言だったのだが、経済産業省(原子力安全・保安院)の発表(7月22日付)があったもので、読んでみる。やはり難解だった。

 まず前提、
 経済産業省 別添1:東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について(指示)(PDF)

 の内容だが、
 7月6日 原子力安全委員会委員長 班目春樹が"総合評価"みたいな事やっってみたらいいじゃん。と。(「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に関する報告について」)
 7月11日 じゃあ"ストレステスト"ということで。(「我が国原子力発電所の安全性の確認について」)
 えー。それって誰が素案作るの? 表向きは原子力安全・保安院でしょ。実質は東京電力だけど。うぇー。
 7月21日 原子力安全委員会で承認。

 次に本文、
 経済産業省 別添2:東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に関する評価手法及び実施計画 (PDF)

 何のテストをするのかと言うと、
 地震津波地震津波・全交流電源喪失・熱の逃し場の喪失(ベントに至る状況)の5つと、総合的な重大事態(シビアアクシデント)の状況下で、建物や機器がどれだけ耐えることが出来るのか。計算値を持って評価する。とのこと。
 もちろん、実際に行うわけでなく、あくまでシミュレートするのみ。(実際にやったら原発事故になっちゃうし)
 一次評価と二次評価の違い、
 経済産業省 参考3:発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価の概要 (PDF) の2頁をみると分かり易い。一次評価は、原子力発電所単体で定期検査の時に行う。二次評価は一斉に全発電所で行う。ってこと。ここで注意したいのは、一次評価通過すれば、その原子力発電所は運転開始するということだ。
 そして、評価内容の違いは、一次評価では、壊れそうになっても動かしても大丈夫なのか(安全裕度)を測るけど、二次評価は、それを超えたらどうなるの?を評価するということらしい。。。(結局よくわからないけど)
 イベントツリー評価
 これはシステムでよく使うフローチャートってやつ。条件式の結果を、Yes or No形式で分岐して、命令を綴っていく手法だね。
 ところで、"クリフエッジ"って何。


 b)“cliff edge effect”については、適切な日本語訳がないことから、「クリフエッジ効果」と訳している。IAEAが発行している用語集には、以下の用語説明がある。(IAEA Safety Glossary 2007 Editionの35頁から引用)
 In a nuclear power plant, an instance of severely abnormal plant behaviour caused by an abrupt transition from one plant status to another following a small deviation in a plant parameter, and thus a sudden large variation in plant conditions in response to a small variation in an input.
 原子力発電所において、一つの発電所パラメータの小さな逸脱の結果、ある発電所の状態から別の状態への急激な移行によって生じる、通常から大きく外れる発電所挙動の事例であり、このように入力の小さな変動に反応して発電所の状態が突然大きく変動すること。

 (引用:原子力安全基盤機構 IAEA安全基準 既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価(邦訳版) (PDF)

 これは"クリフエッジ効果"の解説だが、その"effect"を抜いて勝手な言葉を作ったようだ。"cliff"(崖)・"edge"(端)、"崖っぷち"と訳すのかな。ということなら、"崖っぷち"はまだ、ギリギリの状態で壊れていない状態だ。
 結論としては、"計算値上のクリフエッジ(崖っぷち)を探すテスト"というのが、ストレステストということらしい。。。こんな結論でいいのか?

 無理矢理結論付けちゃったけど。あー。しかし難しい資料だな。翻訳するのも疲れるよ。

 (追記)
 いつ・どこで・誰が、が抜けてしまっていた。
 一次評価は、「定期検査中で、起動準備の整った原子炉に対して実施する。」そうだ。そして、二次評価は、「事業者からの報告の時期は本年内を目途とするが、・・・評価は、発電所単位で実施する。」とある。
 "いつ"については、一次評価は定期検査中に順次行い、二次評価は本年内を目途とする。ということだね。
 次に、"どこで"・"誰が"だが、
 事業者(電力会社)が行い、原子力安全・保安院に提出する。原子力安全・保安院が評価を評価して、原子力安全委員会に確認する。という流れ。"どこで"については明確な記述がないので、現場(原子力発電所)で行わなくてもいい感じ。

 ここで思うんだけど、
 せっかく、ストレステストやるんだったら、一次評価なら安全裕度を測るわけだし、危険は無い(通常の試験運転でも実はある程度行ってること)はずだから、原子力発電所で実際にやればいい。10km範囲くらいの住民の避難訓練も含めて。中央防災会議だか原子力災害対策本部だか、巻き込んでパッケージとして行うことを提案する。