Nishiakashi’s Blog

徒然なるままに。。教えられること多し。

食品企業の放射能対策 (酒類編 追記)

 前回の記事(食品企業の放射能対策 (酒類編))の続き。焼酎と日本酒について、酒造メーカー(蔵元)の放射能対策を調査。

11.三和酒類
 焼酎(いいちこ)・日本酒(和香牡丹)・ワイン・リキュール類など。
 放射能対策に関する情報はなし。
 本社・工場は大分県に、日田蒸留所(大分県日田市)・安心院葡萄酒工房(大分県宇佐市)の2か所で製造。
 三和酒類 環境への取り組み 環境報告書 (PDF)

12.霧島酒造
 焼酎(霧島)・ビール発泡酒・健麗酒(スピリッツ)など。
 本社・工場は、本社工場・志比田工場・霧島ファクトリーガーデンなど、全て宮崎県都城市。放射能対策に関する情報はないが、水・原料の説明が丁寧に記載されている。
 霧島酒造 霧島酒造のこだわり

13.薩摩酒造
 焼酎(さつま白波・神の河等)・発泡酒など。
 以下にある3つの表示マーク(薩摩焼酎宣言)のいずれかがある"薩摩焼酎"焼酎製造者なら、水・原料は鹿児島県内で調達されたもの。だそうだ。
 薩摩酒造 安全・安心の取組


 薩摩焼酎マーク

 「薩摩焼酎」の地理的表示の基準は以下の通りです。
 1. 原料は全て鹿児島県産のサツマイモと水、米麹または芋麹を使用する。
 2. 鹿児島県内(名瀬市及び大島郡を除く)において造られ、本格焼酎ならではの単式蒸溜器において蒸溜し、容器詰めされたものであること。
 地理的表示である「薩摩」はWTO(世界貿易機関)のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)において、原産地としての保護産地指定を受けています。

 (引用:薩摩酒造 薩摩焼酎マーク(薩摩焼酎宣言)

 放射能対策に関する情報が無くても、これら表示マークがある鹿児島県の酒造業者は産地が限定されて安全だということだ。
 鹿児島県酒造組合 薩摩焼酎宣言

 ふるさと認証食品マークのほうは、鹿児島県だけでなく各都府県でそれぞれ食品品目に付いている場合がある。また、各都府県その食品品目によって独自の認証基準があるので、このEマーク食品ならその土地の原料だけと言うわけではない。
 食品産業センター Eマーク食品情報

14.雲海酒造
 焼酎(雲海)・貯蔵酒・梅酒・ワイン・地ビールなど。
 放射能対策に関する情報はなし。
 本社は宮崎県。工場は、五ヶ瀬・綾・高岡・高千穂(以上は宮崎県内)・出水(鹿児島県)・北海道にある。
 雲海酒造 「蔵便り」

15.二階堂酒造
 焼酎(二階堂・吉四六)など。
 放射能対策に関する情報はなし。本社・工場は大分県(大分県速見郡日出町)で製造。

16.山元酒造
 焼酎(五代)・梅酒・リキュール類・地酒など。
 放射能対策に関する情報はなし。本社工場は鹿児島県薩摩川内市
 山元酒造 山元酒造のこだわり

17.財宝


 放射性物質検査結果 2011年10月07日更新

 現在、報道等により全国的に関心が高まっております、放射性物質ヨウ素131」・「セシウム134」・「セシウム137」につきまして、第三者機関にて測定検査を行いました。
 結果は全て「不検出」となりましたことをご報告いたします。
 これからも、財宝は安心と安全を第一に考え、より良い製品とサービスの提供に真摯に取り組んで参ります。

 (引用:財宝 放射性物質検査結果

 鹿児島の地方企業に、放射性物質の検査が公表されている酒造業者があった。これまでの検査実績も公表されている。
 天然水の製造販売が主力。温泉水(財寶温泉)・酒・焼酎(財宝)・飲料・健康食品などを扱っている。注意して欲しいのは、放射能物質の検査は温泉水に対する検査だという事。それでも何もしないより信頼感はある。
 財宝 垂水工場見学ツアー

18.沖縄県酒造組合連合会(泡盛)
 放射能対策に関する情報はない。製造工程は詳しく掲載されている。酒造所の場所(沖縄県内)は以下から。
 沖縄県酒造組合連合会(泡盛百科) 泡盛の製造工程

19.眞露ジャパン
 韓国焼酎(JINRO)・まっこりの輸入販売。
 放射能対策に関する情報はない。製造は韓国にある3つの工場、利川(イチョン)・清原(チョンウォン)・馬山(マサン)で生産。とある。

 ここまで焼酎に関して。
 焼酎は原料が水・主原料(米・麦・芋・黒糖・そば等)・麹で製造される。主原料産地に製造工場があることが多く、工場の場所が福島原子力発電所から遠いほど安全性が高い目安にはなる。とは言え、米麹または添加物が入っていれば、どこから調達してるのか、単純に所在地で信用出来るものでもない。"薩摩焼酎"ブランドは例外。
 放射能対策を実施している酒造メーカーはほとんど無い。ということだ。そして九州には玄海(佐賀県玄海町)・川内(鹿児島県薩摩川内市)に原子力発電所が存在する事をお忘れなく。
 上記主要酒造メーカー以外の製品について、焼酎は、以下から確認のこと。
 日本蒸留酒酒造組合(焼酎SQUARE) 全国酒造メーカー検索
 日本酒造組合中央会 本格焼酎・泡盛

20.宝酒造
 焼酎(宝焼酎本格焼酎)・清酒(松竹梅)・アルコール飲料(タカラcanチューハイ)・中国酒・洋酒・リキュール・調味料(タカラ本みりん)など。
 持株会社(宝ホールディングス)を持つ立派な企業なのに、放射能対策に関する情報がない、対策を行っていないとは。
 工場はほとんどが西日本にある。みりんは松戸工場で製造。
 宝酒造(TaKaRa) 事業場案内
 宝酒造(TaKaRa) 緑字企業報告書2011 (PDF)

21.菊正宗酒造
 吟醸・純米(灘の生一本)・本醸造酒(菊正宗)・普通酒(辛口パック・ピン)・焼酎・梅酒・食品(和風だれ・カレー・かす汁・鍋つゆ)・入浴剤・化粧品など。
 放射能対策に関する情報はない。本社工場は兵庫県神戸市東灘。
 菊正宗酒造 菊正宗について

22.白鶴酒造
 日本酒(白鶴・山田錦・まる)・梅酒リキュール・焼酎・あまざけ・みりん・ワイン・化粧品など。
 放射能対策に関する情報はない。本社工場(大石工場)は兵庫県神戸市東灘。
 白鶴酒造 テクノロジー 品質へのこだわり

23.月桂冠
 吟醸・純米・本醸造酒(月桂冠)・普通酒(月)・古酒・生酒・リキュール類(にごり酒・梅酒・まっこり)・輸入酒(ワイン・ビール)・本みりん・万能料理酒・あまざけ・奈良漬など。
 放射能対策に関する情報はない。本社工場は京都市伏見。
 月桂冠 品質への取り組み
 月桂冠 酒造りと水

24.大関
 清酒(大関・ワンカップ・のものも)・アルコール飲料(梅酒・みりん・焼酎)・甘酒・天然水(北アルプスのおいしい天然水)・お茶・化粧品・もろみ酢・うこんなど。
 放射能対策に関する情報はない。本社工場は兵庫県西宮市に、他に丹波工場もあるらしい。

25.日本盛
 吟醸・純米・本醸造酒(日本盛)・生貯蔵酒・普通酒・焼酎梅酒リキュール・化粧品(NS-K)・ストッキング・サプリメント・健康食品など。
 放射能対策に関する情報はない。本社工場は兵庫県西宮市。

26.黄桜
 吟醸・純米・本醸造酒(黄桜)・普通酒(呑・辛口一献)・にごり酒地ビール・その他(梅酒・料理酒)・化粧品・食品(健康食品・水・酒粕)など。
 放射能対策に関する情報はない。本社京都市伏見、工場は三栖(京都府)・丹波(兵庫県)の2か所。

 日本酒に関して。
 大手酒造メーカーから地元蔵元まで、ここまで見て放射性物質の検査、対策を行っている企業は皆無。大手企業は酒の製造工程から産出される複合商品(みりん・健康食品・酒粕等)を製造販売しているところまであるのに。
 原料の中、"水"は製造工場(蔵元)で汲み上げているのは確かだろうが、"米"に関してはどこで作っているのか明確な情報が見当たらない。心配だ。これでは、伏見・灘に本社工場があっても、安全だと言い切れない。

 上記主要酒造メーカー以外の製品について、日本酒は、以下から確認のこと。
 日本酒造組合中央会 日本酒 蔵元・酒造見学 検索
 日本吟醸酒協会 加盟蔵元
 地酒蔵元会(日本の心) 蔵元紀行

 意外なことに、酒類全般については政府主導で放射能対策を行うことになっている。


 放射性物質に対する酒類の安全性確保のための施策について 平成23年9月

 国税庁では、放射性物質に対する酒類の安全性確保のため、独立行政法人酒類総合研究所と連携しながら、以下の施策を実施します。
 酒類の原料となる農産物等については、地方公共団体において放射性物質に関する検査が実施されているものと承知しており、また酒類において暫定規制値を超過する放射性物質はこれまで検出されておりませんが、食品の安全性に対する国民の皆様の強い関心を踏まえ、所掌事務の一つとして酒類の安全性の確保に関する事務を行っている国税庁として、酒類の安全性の確保に万全を期す必要があることから、施策を実施するものです。
 1 国内全ての酒類製造者に対して、放射能汚染防止のため遵守すべき事項や、放射線に関する基礎知識などの技術情報を提供します。
  (資料1)リーフレット「放射能汚染防止の基本」(平成23年9月版)(PDF/62KB)
  (資料2)冊子「放射性物質からお酒を守るために(酒類製造者の皆様へ)」(平成23年9月版)(PDF/340KB)
 2 酒類製造場内にある出荷前の酒類及び醸造用水の放射性物質に関する調査を実施し、酒類の安全性を確認します。
  (資料3)酒類等安全確認調査の実施について
 3 安全な酒類製造を進める上での技術的疑問点などについては、所管の国税局鑑定官室(沖縄県においては、沖縄国税事務所間税課鑑定官)において技術相談に応じます。

 (引用:国税庁 放射性物質に対する酒類の安全性確保のための施策について (PDF)

 しかし、安心は出来ない。政府のやることは片手落ちだ。
 検査対象は、"出荷前の酒類及び醸造用水"とある。
 そして、国税庁 酒類等安全確認調査の実施について を見ると、検査対象となる製造場は、地域A(福島第一原子力発電所から150キロ以内)が全製造場、地域B(17都県)が4割、地域C(その他の道府県)になると2割しか行わない。
 次に、酒類総合研究所の発表に、こう記載されている。

 酒類等に関する放射性物質の受託分析について

 8. 【重要】酒類の分析結果については、酒類の安全性確保を所掌する国税庁に提供します。結果は国税庁で取りまとめた上、国税庁ホームページで公表(原則として、個別企業名等は公表しません)されるとともに、食品衛生法における国内流通食品の指導・監視機関である地方公共団体に提供されます。
  また、全ての試料について、食品衛生法に定める暫定規制値を超過した場合には、分析結果を個別企業名も含め国税庁に提供し、さらに地方公共団体にも提供されます。

 (引用:酒類総合研究所 酒類等に関する放射性物質の受託分析について

 検査対象の個別企業名を公表しない、そんな検査結果にあまり意味があるとは思えない。

 次に、原料の一部"米"については、米トレーサビリティ法の施行により、平成23年7月1日より産地の表示義務が課されている。だが、それは国産 or 国外産の明記であって、国内産地(・・・県等)の表示まではされない。
 農林水産省 米トレーサビリティ法の概要
 これでは、米麹の原料である米を国内どこから調達したものか分からない。主食として食べる流通米でさえ放射能汚染が懸念されるのに、原料米は大丈夫なのだろうか。以前発覚した"事故米不正転売事件"のような事が起こる可能性もある。
 アルコール飲料は、大人が嗜好して飲むものだから自責の範囲となる部分もある。とは言っても消費量の多い人は注意したほうがいい。

 (以上この記事には、もちろん一部私の主観も入っています。リンク先のページ等でご自身で確認して下さい。心配ならお問い合わせを。)